高卒求人ニュース6月 ~採用担当者は受験者のどこを見る?~
企業の採用担当者は、「学校」と「家庭」での基本的な生活態度から
受験者の本質を知ろうとする。
日本高等学校教職員組合(日高教)などは4月27日、高校生の就職内定率が前年同期比で1・4ポイント下がり、90・2%だったと発表した。就職をあきらめた高校生も8・6%に上り、94年度の調査開始以来、最低だった01年度(84・6%)より高いが、就職状況の厳しさがあらためて明らかになった。日高教は「就職を希望しながら断念するのはあまり聞いたことがない」としている。
今年3月の高校卒業生の就職内定率は90.2%で、前年より1.4ポイント下がったことが4月27日、日本高等学校教職員組合などの調査で分かったようだ。
初めて調査した「就職を希望しながらあきらめた高校生の割合は」8.6%に上ったもよう。
今回の調査は29道府県の509校の8万2797人を対象に3月時点で実施された。
そのうち就職希望者は2万5020人で、就職率は男子93.6%(同0.6ポイ ント減)、女子85.1%(同2.6ポイント減)となり、特に女子の厳しさが際立った。
昨年7月時点で就職を希望していた生徒のうち、8.6%に当たる2274人が就職を断念し、このうち進学に進路変更した生徒は1474人、進路未定は800人だった。
就職をあきらめた生徒の割合は、高知県が最多で14.4%。秋田県、新潟県でも12%を超え、都市部より地方がより深刻な状態であることも浮き彫りになった。
厚生労働省が把握する就職希望者数から推計すると約1万6000人もの生徒が就職を断念した計算になる。
就職内定率90.2%は、厚生労働省が発表している過去の同時期の内定率でも、就職氷河期と呼ばれた平成14年から平成16年と同水準。
現場の教諭からは「就職をあきらめ、進学に変更する生徒が10人以上いた」「無業者のまま卒業する生徒が多い」といった声が寄せられ、「かつての就職氷河期を超える深刻な事態」としている。
そのような状況を受け、厚生労働省・各都道府県労働局・ハローワークでは就職が決まらないまま卒業した新卒者を対象に、体験的に仕事をする中で理解を深め、その後に正社員へ移行する「新卒者体験雇用事業」などの処置も取られているが、中小企業が受け皿となっているケースが多く、「制度は良いが現実はなかなかそう上手くいかない」という意見も聞く。
また、民間の大手総合人材サービス会社でも未就職の高卒、大卒者に対し同じような就業支援を実施し始めている。
これは、各自治体の緊急雇用対策事業を支援するもので、4月より、広島県、仙台市、札幌市にて実施が決定しているようだ。
今年度、就職を希望する生徒本人はもちろん、現場の教諭、さらには保護者もわが子が置かれるこの状況を理解し、危機感を共に持つことが重要だ。
そして、今年も訪れるこの厳しい就職環境を乗り越える準備を怠ってはいけない。
現在の企業業績を見る限り、業績が大幅に改善しているケースはあるが、
大部分は企業の地道な経費削減がその改善理由だ。
そのため、企業は雇用にはまだ慎重な姿勢で、急激に採用数が増すということは考えにくいだろう。
景気回復は予測されているが、先行きは不透明なのは否めない。
そんな中、今年度の大学生の採用は始まっている。
先行する大学新卒者の求人・採用状況は、企業側の採用意欲や意識動向がわかり、後から動く高校新卒者の求人・採用の参考データとなる。
大学生の採用数は10年度と同程度の水準になっている。
しかし、高校新卒者のみの採用を抑制するという企業もあるのは確かである。
あくまでも予測の域だが、高校新卒者の11年度の就職環境は10年度と比べて、同程度か微減なのではないだろうか。
極端な悪化はないと予測はできる。ただ、忘れないでほしいのは、採用人数の増減ばかりに振り回されないことだ。
企業は優秀な人材なら採用するという点においては、昨年も今年も同じだからだ。
企業は厳選採用をする傾向を強めており、それは逆に、採用人数がいくら多くても基準に達しなければ、採用されないということを意味する。
よって、内定を取れる生徒と取れない生徒の二極化がより顕著になることが考えられる。
企業の人事採用担当者からは「基礎学力や競争意識の低下が起こっている」などの声が聞かれるが、さらに重要なのは、「自分の向き不向きを考えないで、安定のみをポイントとして会社選びをする、偏った安定志向」、「挨拶ができない、コミュニケーションを避ける」などという意見だ。
もちろん、これらのことは学校で指導をすることは間違いないが、本質的な部分は短期間での指導ではなかなか身につきにくい。
企業の採用担当は、「学校」と「家庭」での基本的な生活態度から受験者の本質を知ろうとする。
となれば、普段の家庭生活からにじみ出る基本的な生活態度は家庭で教えるしかないことは言うまでもない。
この雇用環境で早く内定をと思うなら、企業人事が最低限条件だとする基本的なことを培っておく必要がある。
できることは、家庭の中で話をしたり、コミュニケーションをすることで、自分の意見を大人に伝えることや、「働くということはどんなことか」を知ること、挨拶を交わす訓練をして、自然に挨拶ができるようにしておくことだろう。